近年、働き方改革や感染症対策としてテレワークが急速に広まりました。
テレワークとはオフィス以外で時間や場所にとらわれずに働くことをさしますが、その中でも社員が自宅で業務をおこなうことを在宅勤務といい、テレワークの多くで在宅勤務がおこなわれています。
これから在宅勤務を導入したい、導入済みだが今後継続すべきか迷っているという企業に向けて、在宅勤務のメリットを企業側・社員側から解説します。
在宅勤務は企業にも社員にもメリットがたくさんある
在宅勤務を含むテレワークは、総務省や厚生労働省が中心となり、国でも推進している働き方です。
各省庁がコロナ禍以前からテレワークの推進をおこない、2022年になってからもテレワーク・ワンストップ・サポート事業を開始するなど、テレワーク環境の整備を継続して進めている理由には、テレワークがもたらす多くのメリットがあります。
総務省のHPにテレワークがもたらすと考えられる効果について書かれているので、以下に引用します。
- 【企業】働き方改革・労働人口の確保・生産性の向上・地方創生
- 【社会】非常時の業務継続(BCP)・人材の確保・離職防止・業務変革(BPR、DX)・オフィスコスト削減・生産性の向上
- 【労働者】多様な働き方の実現(ex.育児、介護、治療との両立)・通勤時間の削減
引用:総務省|ICT利活用の促進|テレワークの推進
これらのメリットの多くは在宅勤務でも得られると考えられるため、在宅勤務を実施することは企業にも社員にもメリットがたくさんあるといえるでしょう。
在宅勤務のメリット:企業側
企業にとっての在宅勤務のメリットについて具体的に見ていきましょう。
業務効率や生産性の向上
就業場所がオフィスから自宅に変わることで、突発的な来客や電話、周囲の雑音などによって社員の集中が途切れることがなくなり、業務効率や生産性が向上します。
在宅勤務を実施するために書類電子化を進めたり承認申請システムを導入したりすることで、従来の業務のやり方より効率的なフローに改善できるという点もメリットでしょう。
ただし、自宅で仕事ができる環境が整っていないなど、場合によってはかえって効率が低下することもありうるため注意が必要です。
通勤やオフィスにかかる費用の削減
在宅勤務に切り替える場合、当然ながら交通費はかからなくなるため、企業にとってコスト削減につながります。
完全在宅勤務にする場合、または曜日を決めて交替で出勤とする場合などでも、従来と同じオフィスの面積は必要なくなるため、オフィスの契約を見直したり複合機の数を減らすことでさらにコストを削減することができます。
BCP対策になる
公共交通機関がストップする自然災害発生時や、従業員同士の接触を減らしたい感染症拡大時のBCP対策として、在宅勤務はとても有効な手段です。
通常はオフィスに出勤して業務をおこなっている部署や社員でも、在宅勤務ができる環境を整えトライアルとして在宅での勤務を実施しておくことで、いざというときにスムーズに対応ができます。
優秀な人材の確保につながる
完全在宅勤務ができる業務であれば、居住地にとらわれず広く採用が可能なため、遠隔地にいる優秀な人材を確保することができます。
また、プライベートと両立しやすい柔軟な働き方として社員に在宅勤務を提示することで、定着率向上と離職防止の取り組みにもなります。
在宅勤務のメリット:社員側
在宅勤務は社員にとってもメリットが多い働き方です。
主な4つの在宅勤務のメリットを確認していきましょう。
育児・介護と両立がしやすい
小さな子どもや介護を必要とする家族をもつ社員にとって、在宅勤務ができることは大きなメリットです。
不測の事態があってもすぐに対応ができることはもちろん、働くことに対する社員自身や家族の不安を軽減し、安心して勤務を続けることができます。
通勤時間を休息やプライベートの充実にあてられる
在宅勤務によって通勤がなくなると、社員の身体的ストレスが減り、時間の使い方に余裕ができます。
空いた時間を休息やプライベートの充実にあてたり、スキルアップのために活用したりするなど、一日のすごし方に選択肢が増えるでしょう。
自分にあった環境を整えられる
オフィスは仕事をするためによいとされる一般的な環境が整っていますが、個人の好みにあわせてデスク周辺の配置をカスタマイズしたり私物を持ち込んだりするには制限がある場合もあります。
自宅なら自分が集中しやすい環境を思い通りにつくることができ、リラックスして仕事にのぞめるでしょう。
遠隔地の企業の仕事もできる
仕事を探すとき、希望通りの条件が揃っている仕事を見つけても、通勤圏内から外れているためにあきらめてしまうこともあるかもしれません。
在宅勤務を実施している企業であれば、遠隔地にある場合でも採用される可能性があり、引越しや転勤の心配もなく、優良な求人といえるでしょう。
在宅勤務のメリットを感じられない場合の問題点とは
すでに在宅勤務を導入しているのに、企業や社員がメリットを十分に感じられていない場合、次のような問題があると考えられます。
仕事がスムーズにできる環境が整っていない
在宅勤務は、ただ単にオフィスでおこなっていた仕事を自宅に持ち帰ればよいというものではありません。
オフィスでおこなっていたのと同等、またはオフィス以上に効率や生産性を向上させるためには、自宅でもスムーズに業務をおこなうためのフローの改善や、各種システムの導入、使いやすいツールの選定などが重要となります。
あわせてPC・インターネット回線・デスクなど、社員の自宅の環境も整える必要があります。
柔軟な勤務が可能になっていない
在宅勤務を「自宅で仕事ができればよい」と考えている場合、社員が望むような柔軟な働き方はできないでしょう。
育児や介護との両立などワークライフバランスを実現するためには、勤務場所だけでなく勤務時間も柔軟でなければなりません。
在宅勤務とあわせてフレックスタイム制やスーパーフレックス制度を導入する、変則的な勤務に対応できる勤怠管理システムを活用するなどの対応が求められます。
在宅勤務のメリットを効果的に得るためには?
在宅勤務の課題を解決し、メリットを効果的に得るためには、在宅勤務の環境や運用を見直す必要があります。
自社の課題に向き合いながら、まずは以下のような点から取り組んでみましょう。
従来の働き方にとらわれない考え方を持つ
在宅勤務を社内で広く取り入れる際、まずは従来の働き方をベースとして勤務場所や時間だけ変えるという方法も可能ですが、さまざまな課題が出てきた場合は、業務フローや人事評価の設計から見直さなければならないこともあります。
従来の働き方にとらわれていると在宅勤務に最善の方法を選択することができないため、経営陣が柔軟な考え方を持つことが必要です。
社員の自宅の勤務環境を整備する
社員が集中して業務に取り組める環境は、業務効率や生産性の向上に不可欠です。
社用PCの貸出、インターネット回線やデスク導入にかかる費用の補助などができるよう、制度や予算について検討しましょう。
省庁や自治体が実施しているテレワーク関連の助成を利用するのもひとつの方法です。
情報共有のツールやルールを整備する
在宅での業務にやりにくさや生産性の低下を感じる場合、社員同士の情報共有に課題がある場合があります。
オフィスで顔をあわせて働く場合と比較すると情報共有がしにくくて当然、という意見もあるかもしれませんが、その課題の多くは情報共有のツールやルールを整備することで解決できます。
在宅勤務導入前のシミュレーションや導入後のヒアリングをしっかりおこない、スムーズなコミュニケーションがとれるよう改善を重ねていきましょう。
在宅勤務に適した勤怠管理ツール・人事評価制度を導入する
在宅で業務の内容は滞りなく進められるものの、働きにくさや不安を感じる場合は、勤怠管理の方法が在宅勤務に適していなかったり、人事評価で公平性が担保されていなかったりすることが考えられます。
在宅勤務に適した勤怠管理ツールとして、業務の中断や中抜けに柔軟に対応でき、隠れた残業をみつけやすいものを選定しましょう。
また、業務プロセス評価と成果主義のバランスを考えながら人事評価制度を改定し、明確な評価項目を社内で広く共有することも、社員が安心して働ける環境の実現に有効です。
在宅勤務のメリットを活かせる働き方を実現しよう
在宅勤務は、企業側にとってはコスト削減やBCP対策、社員側にとっては育児・介護との両立など、多くのメリットがあります。
メリットを十分に得られていない、デメリットの方が多いと感じる場合は、在宅勤務の運用方法に問題があると考えるべきでしょう。
従来の働き方にとらわれない考え方を持ち、社員の自宅の勤務環境、情報共有のツールやルールを整備しながら、在宅勤務のメリットを活かせる働き方を実現していきましょう。