会社で取り扱う文書は法律で管理方法が定められています。これまでは印刷された紙を保管する方法しかできず、ファイリングやインデックス、膨大な書類を書庫へ移動させる作業が必要、検索性がないなどの問題がありました。しかし、近年は電子化して管理することが認められつつあります。 これを可能にする法律が、電子帳簿保存法とe-文書法です。この2つは似ていますが、対象となる文書の範囲がe-文書法の方が大きい、対象となる文書やルールが異なるなどの違いがあります。 今回は、電子帳簿保存法とe-文書法の内容や違いをご紹介します。 電子帳簿保存法とは 電子帳簿保存法(正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」)は1997年に制定された、国税関係帳簿の全部または一部を電子データの形式で保存することを認める法律です。この場合国税関係帳簿とは帳簿・決算関係書類・その他の証ひょう類の3種類を指します。 制定された当初は会計ソフトウェア・会計WEBサービスを利用して作成したデータをそのままの形式で保存することを認めるに留まるものでした。しかし、2005年に「e-文書法」が制定され、上記3種類に該当する書類や帳票ををスキャンしてPDFなどで保存することが認められました。そして2017年の改正により、デジタルカメラやスマートフォンで撮影して電子化することが可能となりました。 2020年の改正のポイント 電子帳簿保存法は2020年にも改正が行われ、10月より施行されています。改正のポイントは以下の通りです。 ポイント①キャッシュレス決済が完全にペーパーレス化 これまではクレジットカードや電子マネーで決済したものについても、紙の領収書やレシートを保管する必要がありました。しかし、今回の改正によりこれらのキャッシュレス決済の利用明細をそのまま会計システムに取り込めばよいことになり、領収書の提出・回収が不要になりました。 ポイント②領収書の受領者側のタイムスタンプが不要に 電子文書のデメリットの一つに、複製が容易であるためデータが改ざんされやすいことが挙げられます。そのため、電子文書タイムスタンプを管理する際にはタイムスタンプが押されます。これは署名やサインの役割を果たし、その日時から変更が加えられていないことが証明されます。 これまでの法律では、領収書には発行者と受領者の両方のタイムスタンプが必要とされていましたが、今回の改正では発行者のタイムスタンプのみがあればよいことになりました。 e-文書法とは e-文書法は、2004年11月に制定された「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の総称です。 この法律は、商法や法人税法など約250の法律・法令に適応されています。一般的な法人に関係するもの、カルテや建築図面など特定業界の書類、個人に関わる書類も対象となっています。e-文書法により、これらの法律によって作成された文書を紙媒体だけでなく電子化して保存できるようになりました。 会社員が業務で取り扱う機会の多い文書の中からe-文書法の対象となるものは、主に以下の通りです。 財務・税務書類……会計帳簿・契約書、注文書・納品書など 会社法関係書類……株主総会・取締役会議事録など 決算関係書類……貸借対照表・損益計算書など e-文書法にしたがって文書を電子保存する際の条件 e-文書法の対象文書を電子保存する際、ただスキャンすればよいわけではありません。経済産業省が挙げる以下の4つの要件をを満たす必要があります。ただ、場合によっては1.の見読性以外は必ずしも全てを満たす必要はありません。 1.見読性(可読性) 電子化されたデータが明瞭に、また必要な時に直ちに表示・出力できることを指します。 2.完全性 文書の内容の改ざんや消失を防ぎ、実際にこれらが起こった際にはそのことが分かるようにしなくてはなりません。この要件を満たすために、タイムスタンプを押します。 3.機密性 不正アクセス対策のため、セキュリティの仕組みが備えられている必要があります。 4.検索性 必要なデータをすぐに取り出せるよう、体系的な検索ができることを指します。 電子帳簿保存法とe-文書法の違い それでは、電子帳簿保存法とe-文書法はどんな違いがあるのでしょうか。 1.対象となる文書の違い 電子帳簿保存法は国税関係書類のみを対象としています。会社でいえば経理部門などに関る書類です。一方で、e-文書法は先ほども述べたように、約250の法律・法令について横断的に電子化を認める法律です。 2.スキャナ保存要件の違い e-文書法は、先ほどお伝えした4つの要件を満たす必要があります。電子帳簿保存法に関してはまず「真実性の確保」「可視性の確保」の2つの要件があり、それぞれの詳細が細かく規定されています。電子化の際にはそれぞれの文書に応じて規定を確認する必要があります。 3.承認が必要か否かの違い 電子帳簿保存法にしたがって国税関係書類を電子化する際には、税務署長に申請して承認を得る必要がありますが、e-文書法ではその必要はありません。 まとめ 電子帳簿保存法とe-文書法は条文だけを読んでもなかなか理解が進まない法律です。今回の記事で2つの法律の違い、また電子化の際の必要要件などの規定をお分かりいただけたでしょうか。 これらの法律に対応することは一見大変そうですが、書類や帳票を電子化できれば業務の効率化やオフィスのコスト削減に大きく貢献します。またこれらの法律は時代に応じた改正がされていくので、起業や新規ビジネスの創出にも関わる意義深いものです。詳細を把握し、しっかりと対応していきましょう。